三ツ星レストランへ

フランス在住数十年で仏語ペラペラの人はいくらでもいるでしょうが、
加えて調理師資格を持つフードライターのAさんと一緒に暮も押し詰まった30日の晩、ラストランス L'Astrance へ。

ラストランスは予約がなかなかとれないレストランで、Aさんは10月に3席予約したが、2人が1週間前にキャンセル、パリに到着した私たちに予約を回してくれたのです。

ドレスコードはカジュアル、ということだったので、大島紬の着物に半幅帯で行きました。たくさん食べても良いように着付けは腰ひも以外はゆるゆるで。いのは黒のタートルネックに黒のズボンにこげ茶のジャケット、ノーネクタイ。(とら)

16区パッシー Passy 、行き止まりの小路にひっそりとありました。
黒板塀を想起させるシックな内装、10テーブル30人位のこじんまりとしたお店。アラカルトはなく、お任せコースのみ。それぞれの料理に供されるワインもお任せ。ここのソムリエはコンクールに優勝したという優れ者、には見えない痩せたホモのような風貌でした。

まず、アミューズ。ブリオッシュとレモン風味でやや甘味のある不審なモノ。すっきりきりっとしたグッドなシャンペンが供されました。

いよいよアントレの一番手は、リンゴとフォアグラをシャンピニオンで包んだミルフィーユ仕立て。素材に分解して味を確かめたり、まとめて食したりして楽しみました。これはオーナーシェフパスカル・バルボのスペシャリテらしい。

続いて茶の湯の茶碗もどきに入ったスープ。何だかあててごらん、と言われましたが初めての味でさっぱり分からず降参。なんと、脇皿に供されているパンをカリカリに焼きこがし、細かく砕いて鶏ガラスープに入れ込んだという、フランスの田舎のお袋さんの懐かしい味とはかくや、という余りものを無駄にしない一品でした。

次は最も印象に残った一品でした。帆立貝殻の中に繊細な出汁にひたされた牡蠣の細片と帆立の胆と醤油風味で煮しめた昆布がフワフワ泡の上に乗っているというユニークなもの。

そして、小ぶりなランゴスティーヌ(手長海老)2匹のグリル。イタリアあたりだと身を固く焼いてしまうのですが、これは幾分生の感じを残し、素材を大切にした、これも日本的繊細さを持つグリルでした。


この後は、酔いも回ってきて、詳細な説明をAさんにしてもらったにもかかわらず、よく覚えてないので、品目の羅列だけでご勘弁を。

平目の蒸し焼き、野菜添え

野菜ベースの小さな花壇に見立てたような可憐な一品(台の上にリゾットみたいなペーストの上に花びらに見立てたのが置かれ花芯に柑橘の香がする、非常に凝った皿)


白トリュフの皿

そしてメインディッシュ=ローストダック 野菜ベースと杏ベースのソース 別皿に味噌ペースト添え

デザートに入ります。

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最後はフルーツ盛り合わせ、エッグノック、マドレーヌ

そしてエスプレッソ

これだけ食すのに約3時間半。このシェフは日本びいきというか、日本的な表現を駆使しており、かつバター風味が少なく食後感もさっぱりしているので余りげんなり来ない。(いの)

小食の私でも完食。食事は味も素晴らしかったけれど、盛り付けの美しさは懐石料理を凌ぐよう! 何よりも感心したのは、それぞれの料理ごとに供されるワインの数々。7皿以上あった料理にシャンパンから最後のデザートワインまで、ブルゴーニュ系が中心でサヴォ、コト・デュ・ローヌや珍しいジュラの濃い黄金色ワインも出た。ボルドーはなし。これは肉料理が最後のカモだけだったからかも。最初グラスに3cmぐらいついでくれて、なくなると絶妙なタイミングでついでくれる。食中酒がなければ食がすすまない私としては、ワインがとぎれることなくあったことはもっとも評価できる点でした。(とら)

これで300ユーロ/一人だから値段といい、手のかかり方といい、京都の懐石といい勝負か。(いの)