コートダジュールのホテル―30年ぶりの再会


旅行のキーポイントはホテルだと思っている。従って旅程を立てるときホテル選びは
一番重要である。
いろいろなホテルに宿泊したが、その中でも再訪したいと思う宿は少ない。いわゆる
シャトーホテルもずいぶん泊まったし、「舞踏会の手帳」の舞台であるコモ湖畔の
ヴィラ・デステ(いの注;もっと新しいのではダニエル・クレイグ主演の新ボンド映画
カジノ・ロワイヤル」の最後のシーン)にも行ったが、もう一度絶対行きたいと思って
いたのがアンチーブの「オテル・ドュ・キャップ(岬)」であった。
2月のベニス旅行の折、帰りに寄りたいと予約希望のメールを送ったところ、冬季は
お休み、4月から営業開始との返事が来た。
4月になって、ホテルのホームページを見ると4月26日からは料金が上がり、それ
以前の5割増しになるとのこと、それではその前にと急遽コートダジュールに行くことにして予約した。いつ前回行ったのかははっきり記憶がなかったが、ホテルの玄関、車
よせのところのパラソルの下にドアマンが常在している風景はよく覚えていた。以前と変わりない。
そこに荷物を預けてフロントへ案内される。当ホテルは初めてですかと聞かれて、前回たぶん20年ぐらい前に泊まったと言うと、何年かと、たぶん1980年ごろと答えると
それは30年前ですね、そのころは手書きだったが宿帳は保存しているので、調べてみましょうとフロントのおねえさん。
まずは食事を、と庭園内の海辺にあるレストラン棟へ向かう。
 
レストラン側からホテルを遠望。
 
食事が終わってフロントに寄ると、おねえさんが「見つけました! それは1982年の
4月29日でした。ちょうど30年前です。」
報告したらしく横にはマネージャーが立っている。「あなたをその時受け付けたのは
私です。この手書きの文字は私の字だ! まだこのホテルに入りたてのころでした。」
ドイツ系らしいマネージャーは白髪で半分しか髪の毛が残っていない。30年の年月はあっという間であったような気がするが、フロントの新人がマネージャーになり、私は
定年退職した。「次回はもう少し早く来てほしい。また30年後では私は生きてるかどうかわからない」とマネージャー。

前回の訪問の時強い印象が残ったのは、金色の縁でガラス張りのエレベーターと座り心地の良いソファーだった。これも変わっていない。
当時はガラス張りのエレベーターそのものが珍しかった。今回見てもやはり美しい。
エレベーター内部の壁はマホガニーである。

このホテルの室内装飾は本当に趣味がいい。
もともとホテルとして建てられたものでシャトーを改築したりしていないので、タペストリーとか代々伝わる装飾品がなく、絨毯もペルシャ産とかでなく普通に見える絨毯である。自宅用のソファーを買おうと思うといつも思い出していたのはこのホテルのソファーである。へんにふわふわしてなく、体を包み込むようだ。カッシーナとかいろいろ見たがここのものより良いと思ったソファーはなかった。(従ってうちにはソファーはない。)
 
居間全体









問題のソファー、30年前は黄色だった。2年前に青に張り替えたそうだ。

コンシェルジェにソファーを買いたいと申し出ると、「うちはホテルなのでファニチャーは売れないんだが……」というユーモアいっぱいのお答え。
どこで手に入るのか調べてねと依頼する。それはブランドではなく、ローカルなカンヌの店だった。翌日土曜にバスと電車を乗り継いでカンヌに行ってみたが、店は閉まって
いた。在仏中にまた行ってみるつもりである。(とら)


アンチーブ岬
先端のホテルの
ビーチから見る
朝のジュアン湾








Hotel du Cap Eden-Roc
bd JF-Kennedy, Antibes
電話 04-93-61-39-01