ヴェルサイユの野外コンサート

時間がたつのは早い。革命記念日前日ヴェルサイユ宮殿テラスでの野外コンサートが大雨のため中止になってから1か月以内には払い戻し手続きをしなければと思って
いたが、やっと昨日書留でチケットを送り返した。
予約した3月から楽しみにしていたのに、本当に残念だった。
バレンボイムの指揮でベートーベンの第9を聞き、そのあとは花火という記念日前夜にふさわしい華やかなイベントだったのだ。

パリからヴェルサイユへはいろいろな行き方があるが、宮殿に一番近いのは、
RER・C線のリブ・ゴーシュ駅。パリ市内を観光している「いの」と「みー」と
オルセー駅で待ち合わせしてヴェルサイユへ向かう。

宮殿前はコンサートに備えて、入口表示が準備されている。

コンサート開始は9時から。8時までにホテルで簡単な夕食(デリとパンを買って来て
食べた)を済ませ、出発しようとしたら雨模様。傘とレインコートとタオルを取りに戻る。
コンサートへ行くというより、サッカー観戦にでかけるような格好である。指定された
入口についたころには雨は本降り、入場券を見せるとCDとシャンパン1杯の券を
くれたが、傘をさしているので、シャンパングラスを持つ手は余っていない。
まだ埋まっていない席は雨でびしょ濡れである。案内の女性がスポンジで席をふいて
くれる。その上を持参のタオルでふき、素早く座る。おしりは濡れなくてすんだ。

9時近くなると席が埋まってくる。入口で売っていたビニールの雨合羽
(10ユーロ!)を急遽買いこんだ人も多い。
 
開演予定時間9時を過ぎてもまだ人は入ってくる。雨はドシャッと降るかと思えば
小降りになったり、時には青空も見える。

9時半になるが、雨は降り止まない。ステージは一応建て組みで屋根があるが、
もちろん楽団員は現れない。この雨の音ではたとえ演奏があっても良く聞こえない
のではないかと思っていると、時々ブーイングが起こる。「早く中止にしろ、払い戻せ」
とでも叫んでいるのであろうか? あきらめて自己の判断で帰ろうとした人もいたが、
混雑のため出口へ向かえず、また引き返してくる。

野外だからヴェルサイユ宮殿とはいえ、スマートカジュアル的な服装でいいだろうと
思っていたが、この日のドレスコードは雨合羽!

雨はやむ気配もなく、スエードの靴をはいていた「いの」の足はびしょ濡れである。
やっと中止が決まったのは10時少し前だった。滑らないように足元に気をつけて
宮殿を出て、ホテルに戻る。濡れた服を脱いで、お風呂にはいりたいところだが、
この日は寝るだけという予定だったので、シャワーしかない部屋を予約していた。
それでも熱いシャワーで温まり、濡れた靴の中にあるだけのトイレットペーパーを詰め、
タオルかけのヒーターをオンにして、濡れたシャツとズボンをかけ、フロントでウィスキー
をダブルで2杯ずつもらい、飲んでいると、外で花火の音が。花火はやっているらしい。
しかし花火を見に外出する気力は残っていない。靴も濡れてるし・・・・・・ 

翌日は快晴とはいえないが、天候は回復、宮殿見学にでかけた。
ステージの解体作業はもう始まっていた。
昨日傘で埋まっていた観客席は素敵な場所だったことが分かる。

天候の安定した南仏で屋外コンサートやオペラが盛んな訳が分かった。
夏とはいえ、天気の変わりやすいパリでの野外イベントはリスクが多いと思う。
これから払い戻しとか、ギャラの交渉とか、保険の請求とか中止となったイベントの
後始末は大変である。(とら)