オペラ 3連戦

バスチーユ・オペラ座へ向かう人々。開場時間7時はもう夕暮れ時。

10月からオペラの2012〜13年のシーズンが本格的に始まった。
当初は10月23日が初日の「トスカ」だけの予定だったが、S−F夫妻に付き合って
フィガロの結婚」、ナタリー・デセイフアン・ディエゴ・フローレスの2大スターが共演
する「連隊の娘」のチケットがとれたので、都合3連戦となった。

最初に行ったのはモーツァルトの「フィガロの結婚」。
夏にエクザン・プロヴァンスの音楽祭で観た時は、
現代風の衣装・演出だったので今ひとつ物足りなかったが、
今回はちゃんとした時代考証がされている装置と衣装。

席は2階のバルコン。平土間と1階の
バルコン、そしてこの2階バルコンが
1等席。


舞台からは少し遠いが、舞台全体とオーケストラピットが見渡せると言う意味では
劇場を楽しむには一番良い席かもしれない。

雨模様だったのでとらは木綿の着物。
少しドレスアップの雰囲気を出すために同系色の光る帯。
F女史はエトロのエレガントなジャケット。
男二人はパリオペラ座にあわせた自由なカッコウ

幕間の休憩風景

フィガロの結婚」は前作「セヴィリアの理髪師」でフィガロの協力でロジーナを妻としたアルマヴィーヴァ伯爵が、結婚生活に飽きて、フィガロの婚約者、ロジーナの小間使いスザンナの初夜権を復活させようと口説くという喜劇で、ふたりの結婚式の日の朝から夜までの物語である。オーケストラが舞台の進行に調和していて良かった。ちょっと
歌手が負けていたきらいはあったが.......。
出演者ではアルマヴィーヴァ伯爵夫人(ロジーナ)がうまい。3幕目、フィガロが今まで結婚を迫られていたマルチェリーナの子供と判明し、父のバルトロと親子3人で抱き合って喜ぶご都合主義の場面、エクザンではそのまま見逃されていたが、パリでは大笑いの場面となっていた。演出にもよるが、舞台は観客にささえられている。
このあとのフィガロの結婚式はオペラ座の奥行きのある舞台を生かして立体感のある豪華なパーティの場面、招待客のダンスもさすが、バレリーナを抱えるパリ・オペラ座、華やかであった。
フィナーレ

8日おいてドニゼッティの「連隊の娘」。
ダブルキャストで、10月公演のナタリー・デセイ、ファン・ディエゴ・フローレスの組み
合わせは流石の人気でチケット入手が難しかった。

聞いたことのないオペラなので、脚本を取り寄せ、勉強してから行った。
ナポレオン戦争の時代、連隊の兵士たちに育てられたマリーが実は貴族の娘と分かり叔母の伯爵夫人にパリへ連れられて行く。恋人のチロルの男との仲を裂かれて、貴族と結婚させられそうになるが、叔母は実の母だと判明し、娘の本当の幸せを考えて、
チロルの男との結婚を許すという、たわいない話である。
ドニセッテッィのオペラは見たことがないし、筋は単純だし、なんかつまらなそうと思ったが、おもしろかった。舞台は出演者にかかっているという自明のことを改めて納得した。
フランスの歌姫といわれるナタリー・デセイは演技にも定評がある。タイトル・ロールの娘を楽しそうに演じていた。歌も素晴らしかったが、聞かせどころの少ない曲だったので、拍手は相手役のテノールフアン・ディエゴ・フローレスに一歩譲った。1幕目の終わり近く、愛を歌い上げるアリアでは拍手が鳴りやまず、パリに来て初めて会場を揺るがすような拍手とブラボーの歓声を聞いた。後で調べたら、このアリアの高音を出せるテノールが少ないため、このオペラは上演回数が少ないのだそうだ。やわらかい美声と力強い響きの両方を兼ね備えたフローレスはレコード会社の宣伝文句によると「百年にひとりのテノール」とのことだが、あながち誇張ではないかもしれない。

この日はまた観客がいつものパリ・オペラ座らしくなく、正装のカップルが多かった。
初日ではないが、特別な日だったのかもしれない。仏人男性が100人位タキシードで集合しているのは初めて見たが、なかなか素敵なものである。雨だったので、着物で来なかったのが残念。
フィナーレでのフローレス

ナタリー・デセイ

それから4日おいてプッチーニの「トスカ」。
名アリア「歌に生き、恋に生き」「星は光りぬ」で有名なオペラだ。

チケットの発売日に初日を予約した。
なんか、毎週オペラ座に行っている。



「トスカ」は五指に入る人気オペラである。背景はやはりナポレオン戦争のころの
ローマ。タイトル・ロールのトスカは歌手、恋人の画家カヴァラドッシは脱獄した友人である政治囚の逃亡を助けたために死刑宣告される。 トスカは、彼を救おうと警視総監スカルピアを殺すが、結局カヴァラドッシは処刑され、トスカも彼の後を追って自殺するという悲劇である。

初日ということもあって、とらはロイヤルブルーの色無地に光る大島紬の帯。

幕間の白ワインとロールサンド

まず、空席が目立った。初日なのに前評判が良くなかったのか。
一幕目、最初の見せ場、カヴァラドッシがブリューネットのトスカをたたえて歌う「妙なる調和」、歌い終わると、オーケストラが一時演奏を止めて拍手を待つが、まったく拍手が起きない。気の毒なくらいである。その後拍手を期待しなくなったのか、オーケストラはアリアの後もすぐ演奏を続けるようになってしまった。
フィナーレ

いのもこのオペラはつまらないという。確かに3連戦の中では最低の出来だったが、
「トスカ」自体は傑作という評価である。しかし、いのはウィーンで見た「シチリア
晩鐘」のほうがなんぼか良いという。来月ウィーンで再度「トスカ」を観る予定だ。
どんな感想になるか楽しみである。(とら)

Mozart: Les Noces de Figaro
Donizetti: La Fille du Regiment
Puccini: Tosca