また歯医者へ

表面がカリカリ、内がミデアムレアのステーキにかぶりついた。
タフな噛みごたえ。これぞ肉という歯ごたえが好きだ。
でも数回噛んだだけで簡単にポロリと差し歯がはずれた。
今回はこの前とは反対側の歯だ。

先週行った歯医者とは恐らく2度と会わんだろうと思い、いろいろ予習したメモを捨てたばかりだった。
電話番号だけは控えていたので、帰宅後すぐ電話した。
秘書は英語を話せないが、幸い名前を覚えてくれていたようで、医者に代わってくれた。
状況を説明すると「パリの空気が合わないのかね」とのジョーク。我々の、水が合わんというようなものか。

アポが取れるのは早くて来週かと覚悟していたら、今夜7時に来れるか、と期待以上の返事であった。

その時間に行くと、もう秘書はいない。医者本人が出迎えてくれた。
処置台に登る。高い。本当に登るという感じだ。そして長い。横になっても足がはみ出ない。
今回は前置きの会話もなく全て心得た様子ですぐに作業開始。助手がいないので唾液を吸い取るノズルは口中の端に置きっぱなしだ。日本みたいにラテックスの手袋など嵌めない。素手である。マスクもしない。彼の息がかかる。うがいしろとも言わない。口の中へ即でかい手というか指が突っ込まれる。前回は使わなかった、例の嫌な高音を発するドリルが作動開始する。
えぇ〜前回はそんな治療はなかったのに、と思うがもう遅い。抵抗できる状態にない。

ともかく無事終了。またタダという訳にはいかん、と思い、治療費を受け取って欲しいと述べると、すんなりと了承された。急患扱いということで50ユーロであった。
帰る時には掃除のおばさんが玄関で待機していた。やはりこの医者は偉い、と思った。
診察時間外なのに対処してくれたのだ。フランス人が残業したのだ!

近い将来また会いそうな気がするので愛想を振りまいて辞した。(いの)