友遠方より来たる 

パリに1年滞在すると言うとプロトコールとして「ぜひ遊びに行きたい」と返ってきたものですが、はたしてどれだけの人が本当に来てくれるかなと思っていたところ、昨日第一号が到着。この季節だけあって観光目的ではなく、アングレームで行われるコミックサロン(漫画の見本市)とパリの語学教材展示会に出品するため、30年来の友人である台湾の出版人H氏がやってきました。

早朝上海を経由する中華系の航空会社でパリに到着したH氏は飛行機の中で充分睡眠をとったと元気なので昼食を一緒にすることにしました。H氏は車椅子利用者なので、彼の宿泊するホテルから近くて、ある程度の広さがあって1Fにあるレストランを探したところ、おあつらえ向きのところが2か所。一軒は魚料理店で生ガキがおいしいとここがいいのではと「いの」に相談すると、「到着したばかりでこれから仕事なのに万が一カキにあたったらしたらまずいよ」とさすが元駐在員のお言葉。そこでもう一軒のパッサージュ・ヴェロ・ドダにあるレストランにすることにしました。

パリのパッサージュのなかでも一番美しいといわれているヴェロ・ドダはサントノーレ通りを入ったところ、17世紀に毒殺魔といわれたブランヴィリエ侯爵夫人の館があったところで、その後放置されていて19世紀に入ってからパッサージュになったとのこと。パリのパッサージュはガラス張りのアーケード街で19世紀の終わりには100軒近くあったということですが、現在も当時のおもかげを残しているところがいくつかあります。

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私たちも現役のころはパリの観光をするひまもなくアポイントに追いまくられていましたが、たぶんH氏の滞在もそうに違いないと、ちょっとした観光も兼ねて19世紀の華やかなりしパリの残り香の感じられるこのパッサージュを案内しました。レストランは3コースメニュをとって、ワインとスパークリングウォーターをもらって3人で86ユーロとリーゾナブルなお値段。さっぱりした味付けで、デザートまで食べても適切な量で、H氏も満足した様子。

その後、H氏の新しいビジネスの話を聞いたり、ピタゴラスの定理をもとにしたという人生占いを私の生年月日をもとにしてH氏がしてくれたり(けっこうあたっていました)楽しい時間を過ごしました。

考えてみると、パリに着いてから夫婦ふたりでいることが多く、他人と話したのは数えられるぼど。本・テレビ・ネットと情報はあるけれど、やはり第一次元情報である生の会話も大切、生活基盤が確立されたら、もっと外に出ていろんな人と交流しようと思いました。(とら)