マルディグラの仮装パーティ

マルディグラは東京では有名なレストランの名前だが、フランス語で「カーニバル最終日」のことで、直訳すると「肥沃な火曜日」つまり水曜日から始まる断食前夜のたらふく飲食する日である。
この最終日の仮装パーティ参加が今回のベニス旅行の目玉です。日本にいた時からイタリア語の通訳をしている友人に調べてもらったり、ネットで検索したりして、パリに来てやっとピッサーニ宮で行われるパーティ主催者と連絡がつき前払い金を銀行送金して予約。到着日に残金を現金で払い招待券を受け取った(クレジットカードは受付ない)。ひとり400ユーロと安くはない値段だが、普通は入れない貴族の館で食事つき、音楽あり、まあ許される範囲か……。

ドレスコードは仮装。現地でのレンタルもあるらしいが、高そうだし、日本人がプリンセスのかっこうしたって様にならないしと、着物それも振袖を持参した。
「いの」は羽織り袴にしようかと検討したが、持ってきている着物は大島の蚊絣と納戸色の江戸小紋という地味なもので、紋付の羽織りも着てみるとただのコートにしか見えない。かわりに背中に赤富士が染め抜かれている襦袢を羽織ってみるとなんとかなりそう。本人の「国辱ものだ」という言葉を無視して、寒いのでタートルネックセータとズボンの上に襦袢を着物代わりにして帯を締めるという作戦で行くことにした。

いのの仮装


 


宮殿の正面の船着き場でのとらの振袖仮装








地図で検討をつけて宮殿を探すがなかなかみつからない。3回も人に聞いて「えっ通れるの?」といった暗い超小道をぬけると人がたむろっている中庭が。


「ここ、ここ」と呼び込まれ、中に入ると時間が早すぎたためまだ準備中。その後続々とやってくる仮装の着飾った人々は主に宮殿の船着き場から水上タクシーで到着。
ベニスでは運河に面した船着き場がメインエントランスのようである。





生演奏が始まり、食前酒のシャンペンがサーブされ、アペタイザーのお盆を持った
ボーイが会場を回るころには一階のフロアは人でいっぱい。全員仮装である。

フープで広げたドレスの女性たち、蜘蛛のデザインのドレスの人、マリーアントワネットのように結い上げたかつらの女性、女性の仮装はまあ普通といえば普通だが、それと同じ人数(パーティは基本はカップルなので)の男性の仮装にびっくり! ナポレオンたち、バッハのようなかつらをつけた人、ワシントン風のかつらに白塗りメークの人、帯剣し勲章をつけた軍人の扮装、年配者も負けていない。ローマ法王風あり、退役軍人風あり。泰西名画を見るようである。

8時半ごろ2階で受付が始まり、招待状と引き換えにテーブル番号が渡される。
天井画はティエポロ作、輝くシャンデリア、ベネチア貴族の館がここに現出。

私たちのテーブルはベネチア在住の背の高いカッコいいカップル、ミシシッピからの年配女性、アラバマから来たカップル、アメリカ勢のドレスをデザインしたというシアトルから来たおかま風男性、オランダからの趣味のいいカップル(男性はけっこう年配だが女性は若くて美人)。共通言語は英語である。「このパーティに来るのは初めてか?」と聞かれるので「イエス」と答え、逆に同じ質問をすると、なんとこのテーブルのメンバーは私たち以外全員リピーター。10回目などという人もいる。オランダカップルは3回目、一週間滞在のキッチンつきアパートを借りているという。さすが、ダッチアカウントのオランダ人である。

オランダカップ
 

アメリカ勢

とらにパリのおいしい店を
教えるミシシッピおば



地元カップ




食事が始まったのが9時ごろ、スープ、パスタ2種、メインは黒鯛、デザートと3時間ぐらいかかって供されたが、400人弱いるパーティ客にもかかわらず、熱々のリゾットをサーブしていたのはえらい。

えびのクリームスープ

かさごと子イカのパスタ

帆立貝のリゾット

黒鯛の地中海風




生クリームのババロア、マロングラッセ



生演奏のミュージシャンが各テーブルをまわる。私たちのテーブルではタンゴを習っているというベネチア女性がさっそくアルゼンチンタンゴの曲をリクエスト。バイオリン弾きのおじさんが何故か私にサービス、日本人が珍しいためか? 「あなたのために」とかいいながら弾きはじめた曲はもちろん「スキヤキソング」。アメリカ人たちは「オー、スキヤキ!」と大喜び。謝肉祭→カーニバル→スキヤキ→佐川クンと連想が……。

最後のデザートのころには人々は席をたち、旧知の人々と挨拶をかわし、大記念写真大会。ウィーンからの特別ゲスト社交界デビュタントの若い女性たちも聖職者風仮装のおじさんに連れられて登場する。

下のフロアでショーが始まる。このあとダンスがあるということだが、1時も近いので我々は水上タクシーで帰ることにした。船着き場ではタクシーを待つ人の列。

我々のホテルは運河沿いで近いが、タクシーは50ユーロを要求。その後相客を乗せることになり40ユーロに値下げ。しかし彼らからは100ユーロはぼったくった様子。
カーニバル最後のボロもうけだ!

ベニスには日本人も中国人も韓国人もいっぱい来ている。
しかしこのパーティは明らかに西洋人のもので、東洋人は我々以外皆無。
彼らにとっては変なのが紛れ込んで来たと思ったか、はたまた招待状の冠に印刷されたインターナショナルにようやくなったと思ったか、は定かではない。

翌朝も快晴。


散歩がてら運河の反対側から撮ったピサーニ・モレッタ宮の写真がこれ↑です。

参加者の仮装を見て、また来るならもっと派手にいきたい、松竹衣装から歌舞伎衣装でも借り、上から下まできめたい、とリピーターになっちゃうかも。(とら)

Palazzo Pisani Moretta
21 Febbraio 2012