アンナ・ネトレプコのリサイタル

昨年メトロポリタンオペラで来日が予定されていたが、フクシマの影響で出演を中止
したアンナ・ネトレプコのリサイタルが8区サル・ガヴォーであるという情報を得てすぐに予約した。ロシア出身のネトレプコは今最も人気のあるソプラノのひとりである。
チェルノブイリの経験者である彼女が去年日本で満足な歌を聞かせられないとの理由でキャンセルしたのは同情できなくもない。今回はロシア歌曲をピアノ伴奏で歌う。

サル・ガヴォーはロン・ティボー国際音楽コンクールの会場であり、音響が良いことで
有名だ。1,000人ちょっとは入れる会場の大きさもちょうどよい。

8時開演ということなので7時半に会場に着く。席は2階のバルコン、先に席に着いていた「いの」を見つけて、すでに座っている人にパードンと声をかけ、お尻を舞台の方に向け蟹歩きで席に着く。もうかなりの人が席に着いている。人々を観察していると、席を案内してもらう時に案内嬢?にチップを渡している様子。
チップは日本人には馴染ない習慣で、以前はヨーロッパ・アメリカ旅行の時は神経を
使っていた。しかし、クレジットカード支払いが増えた現在、レストランではほとんど
サービス込みの値段がつけられているので、よっぽど良いことがあった時に小銭を置くくらいである。タクシーもチップを渡さないのが普通のようだ。ホテルで荷物を運んでもらうときとベッドに置くいわゆる枕銭ぐらいしかチップを出さないのがこのごろのフランスである。

いのにチップを渡したか聞いたら、そんなことは知らんかったという。なおも人々を観察すると、5人に4人はチップを渡している。今度から我々もチップを渡そうと考えるが、
いくらぐらいが適当なのだろう……

歌は前半はリムスキー・コルサコフ、後半はチャイコフスキーの曲だった。トルストイプーシキンの詩が多い中でハイネの詩からの翻訳「なぜ」が唯一ロシア人以外の歌曲だった。当然歌詞は全てロシア語で、プログラムにフランス語の訳があったが我々には猫に小判
どの歌も初めて聞くものだったが、さすがに素晴らしい歌声・声量である。このところ昔有名だが盛りを過ぎた人しか聞いていなかったので、今まさに旬の人の実力を思い知らされた。あとで調べると、彼女はバレンボイムのピアノで2009年のザルツブルグ
音楽祭で今夜の曲目を歌っていた

歌い終わったとき拍手の嵐と足踏みが! 
アンコール曲はドボルザークのジプシーララバイほか3曲。

観客からの「イオランタ!」とリクエストがあったがすかさず「イエス、でも11月にね」と軽くあしらう。11月にパリでチャイコフスキーのイオランタに出演する予定である。
「マノン!」のリクエストには「あと4時間かかっちゃうわ」。スターである。
イオランタ行こうかな。(とら)

Salle Gaveau
45-47 rue La Boetie 75008 Paris
電話 01-49-53-05-07