コクリコはどこに

与謝野晶子の短歌「ああ皐月 仏蘭西の野は火の色す 君も雛罌粟 われも雛罌粟」を少女のころ読んだ時から、いつかはこの光景を見てみたいと思っていた。

4月下旬コートダジュールに行ったとき線路脇に2〜3輪
さいているのを見つけ、南だから早いんだ、パリの5月が
楽しみだと思ったものだった。


しかし、5月、6月ときて、ぽつぽつと咲くコクリコは見るが、バ〜ッと火の色すと
いわれるほどのコクリコの群生はお目に掛かれない。

1998年に日本におけるフランス年というイベントがあって仕事で携わっていた。
ドラクロワの「民衆を率いる自由の女神」の記念切手が発売され、セーヌ川にある自由の女神像を日本のお台場に持ってきたりと、フランス政府肝煎りのイベントだった。
その時のシンボルがコクリコだった。フランスといえばコクリコだったはずである。
4月に桜のない日本が想像できないように、5月にコクリコのないフランスなんてあっていいのか?

南西地方を旅行した時、やっとコクリコがたくさん咲いている風景とめぐりあった。
それは幹線道路から外れた道の道端だった。
 
今のフランスの野原には緑の草が青々と茂っているだけで、コクリコは影も形もない。
郊外に電車で出かけると、線路わきにたまに咲いているところはある。
自宅の傍に「セーヌの上流からの水を市内へ送る貯水池があり、そこの土手にコクリコがあふれる」と、ある案内本にあり楽しみにしていたが、ここも一面緑の草だけだ。

ねずみ山公園に6月半ば過ぎてからやっと細々と咲き始めた。
 
いったい何が起こったのだろうか? ケシの大量栽培はご法度か?
今年はいつまで経っても寒かったので、開花が遅れたのだろうか?
昔の日本のレンゲ畑のように、今は一部にしか残っていないのだろうか?
どなたかコクリコの群生を見たことがある方はぜひ教えていただきたい。(とら)