オランジュ野外オペラ − ラ・ボエーム

オランジュ古代ローマ劇場で毎夏行われる野外オペラで有名だ。
100年以上の歴史があるこの音楽祭の初日の演目は「ラ・ボエーム」だった。

オペラ開始は陽の落ちる9時45分から。町で夕食をとろうと、ホテル前から出発する
プティ・トラン(ちんちん電車)の時刻をチェックすると一番早い出発が7時とある。
それを目指して6時45分にホテルの玄関に行ったが、トランは影も形も見えない。
我々の予想では人が並んでいるはずだが、人もいない。そのうちばらばらと集まって
きたが、好きな場所にただずんでいる。日本だったら「トラン乗り場―オペラへ」という
看板が立っており、人々はその前に整列しているところだが。これでは早めに来た
意味は全くなかった。7時15分になってもトランは来ない。「これじゃ次の7時半出発に乗る人も一緒になっちゃうじゃないか」と心配する「いの」。トランは7時20分にやっと
来た。整列乗車と呼びかける係員もいない。東京の通勤で鍛えてきた我々は素早く
最初の箱に乗り込む。運転手が人々から料金を徴収し始める。動作がゆっくりだ。7時30分になっても出発しない。そうこうする内にホテル従業員が出てきて、女性だけに
ホテルのマークの入った扇子を配ったりして、結局出発は40分遅れだった。

古代劇場のまわりは今夜は車両進入禁止。
適当なカフェを見つけて入ろうと歩いていると、大道芸人やクッション売りやらがいる。
クッションは一枚10ユーロとボリボリだ。もちろん我々は用意周到、クッション持参だ。

カフェでクィックメニューを選び、食べ終わるころには陽も傾き始め、
夕暮れが広がってきた。  古代劇場の石の階段をえんえんと上る。


とらは木綿の着物。
手に持っている紙袋にクッションが入っている。



9千人収容という古代劇場だが、ほぼいっぱいになった。舞台のうしろの壁が残って
いる古代ローマの劇場はヨーロッパではここだけだそうだ。壁の長さは103メートル、高さは36メートルと巨大だ。真ん中に初代皇帝アウグストゥスの彫像がある。

ラ・ボエーム」は去年の6月メトロポリタンオペラ東京公演の時に見ており、これで2度目だ。その時は福島原発の影響でスター歌手の来日が次々とキャンセルされ、主役の交代もあった。今回オランジュのオペラの演目の中には「トゥーラントッド」もあり、これは20年ぐらい前に見たきりだったので、どちらにしようか迷ったが、主人公ロドルフォ役をパヴァロッティの再来と評判のヴィットリオ・グリゴーロが歌うというのでこちらにした。さすがに素晴らしい声量だった。エクサン・プロヴァンの劇場と較べて、音響が抜群に良いこともあったかもしれない。石造りのローマ劇場おそるべし。

さすがザ・イタリアン・テナー、パフォーマンスが派手。

初日だったので、カーテンコールの舞台には裏方の美術担当、衣装担当も登場。

ラ・ボエームは室内の場面が多いので、野外劇場ではどう演出するのか注目していたが、照明をうまく使っていた。3幕目のアンフェール門の場面では床いっぱいにライトで雪のイメージを作り、雰囲気をだしていた。余談だが、この当時のアンフェール門は我々のアパートの最寄駅ダーンフェルロシュローにあり、そのころはまだパリ市外の
田舎だった。2幕目のカフェのシーンはクリスマスの群集とか、軍隊の行進のような
多人数が登場する派手な場面だが、野外劇場にはぴったりだった。(とら)


終演後遺跡はローマ風にライトアップされていた。