フランスの美しい村

「フランスの美しい村」は1982年にひとりの村長の呼びかけで地方の村の保全と活性化を目指して設立された。主な選定基準は人口が2千人未満であること。2か所以上の保護遺産か遺跡があること、村の建物の外観に調和がとれていることなどで現在
156村を認定している。

北にヴォークリューズ山地、南にリュブロン山地のあるリュブロン自然公園は面積12万ヘクタール、日本の富士・箱根・伊豆国立公園と同じくらいの広さだ。このなかに
美しい村が6つもある。今回はそのうち3村を訪れた。

北からまずヴナスク (Venasque)
岩山の頂上に村落を集中させた典型的なプロヴァンスコートダジュール地方のローマ時代からの村だ。日本でいえば、室町時代か戦国時代の防衛的山城がそれなりに形を変えながら現代にまで生き残ったような印象だ。狭い山道をくねくねと頂上の村へと向かう。駐車スペースは教会前の広場に4〜5台停まれる程度の広さしかない。そこから歩いても20分もあれば一回りできる小さな村だ。さすがに眺望がすばらしい。

村の教会

残っている中世の城壁

城壁からの眺め。

ヴナスクからゴルドへは約15キロと短いが山越えの道だ。

岩だらけの峠の中ほど。車一台通らない。



ゴルド (Gordes) はヴォークリューズ山地の端の崖の上に建てられた町でやはり
ローマ時代からの歴史を持つ。山の傾斜地にこせこせと石造りの家が林立している。下の広い平地になぜ移り住まなかったのだろう。ご先祖様からの土地だからだろうか。遠くから見た目は息を飲むほど美しいが住むとなると大変そうだ。


階段状に連なっている家々。



ルシヨン (Roussillon) はゴルドから東へ11キロ 世界最大の赤土鉱脈の中心である。
赤土を原料とした顔料で家の壁は塗られている。赤色の壁と緑のコントラストが美しいが、この村にも何もない。日常の買い物すら不便ではなかろうか、と心配になるくらい何もない静かな村だった。一時間もいれば十分で、少なくとも住みたいとは思わない。

赤土の採取場跡


上空から見た、村と採掘場跡

フランスの美しい村は確かに絵になるが、なんとなくみな似ている。
中世からの古い町で教会、レストラン、カフェ、土産物屋で構成されているように思う。この3つの村は静かで、しっとりした佇まいで、古い歴史があり云々だが、ある意味
パターン化しているように思え、あと3つの村には行こうという気はなくなっていた。
雑誌でとりあげられたりして思わず行ってみたいと思わせるフォトジェニックな風景だが、とにかく人口2千人未満の村なので小さい。
わざわざ行くことはない、なにげなく寄ってみて「いい所だったね」という感想を持てればいいのではないかと思った。(とら)