ウィーン少年合唱団

結局、ウィーン少年合唱団のチケットは買えなかった。
この日は夏休みが終わった最初の日曜日、しばらく振りにミサに登場するということでいつも以上に予約が殺到、ツーリスト・インフォメーションまでチケットが回ってこなかったらしい。当日少し前に行けば買えるかもと言われ、開始時間の30分前に宮殿の
礼拝堂の前に到着したが、もう長い行列が…… ダフ屋もいない。
仕方ないから行列の後ろにつく。ミサは9時15分から。


チケット案内の人に聞くと、立ち見席があり、そこにも入れない場合は
入口ホールのモニターにミサの中継が映し出されるということだ。
なんとか入ることは出来そうだ。9時の鐘がなると行列が動き始めた。

すると中から係員が出てきて、「席の余りが出ました。欲しい人」と列に向かって呼びかける。「ハイハイ」と一番に手をあげると、こっちだよと列の先に案内された。遅れて何組かの人たちが続く。土壇場での席の余りとはキャンセルなのかノーショウか? 
しかし、提示された席のチケットはふたり別々で、右と左に分かれる。とらの席は2階のけっこういい席だったが、いのの席は狭い部屋の最後列だったためほとんど何も
見えず、音はよく聞こえるが礼拝自体はモニターで見ていたという。

座席が少ないと言われていたが、3階席まであり、これが教会のミサか
と思われるような観客の数である。

少年たちは3階のテラスで歌っているらしく、2階からは姿は見えない。1階に居れば、文字通り天から聞こえてくる歌声に思われるだろう。
オペラとは違う、変声期前の少年の声の美しさ。ボーイソプラノ合唱団を創案した人物はどんな人だろう?日本でいえばジャニー・喜多川さんか……
ミサは続き、ドイツ語での司教のお説教がある。当然なにもわからない。周りの人に倣って立ったり座ったりする。献金のカゴが回って来たので、1ユーロ入れる。高い入場料を払ったということだからか、献金しない人も多い。
聖体拝受の時の平和の挨拶を初めて体験した。隣の人たちと握手を交わし「ピース」と祝福しあう。教養ある?とらはそこでラテン語で「パーチェン」と言ってみたら、追随してくれた人がいたのでうれしかった。
長かったミサが終わり、3階から少年たちが降りてくる。祭壇に上がって歌が始まる。
お〜っと思ったら、1曲のみのサービス。あっという間に解散。

礼拝堂を出た王宮前広場。見学していると、父親に連れられて帰宅する合唱団の少年を眼にした。かわいい!よほど写真撮影を申し込もうかと思ったが……、韓流追っかけのオバサンじゃあるまいし、控えた。

次の目的地ウィーン美術史美術館は地図を見ると王宮の庭園フォルクス・ガルテンを抜けて行けばすぐのはず。
美しい歌声の余韻にひたりながら、快晴の空の下、花の中を歩く。

宮殿のような荘厳な建物が見えたので、これかと思ったら、議事堂だった。
ウィーンの建物はみな大きく大変立派である。

地図で確認すると、どうやら90度違う
方向に歩いていたらしい。

ウィーン旧市街の道は碁盤状でも、パリのように直線でもなく、かなり曲がっている。
しかし、スペースがあるせいか、フランス南部や東欧の中世を残す街のように窮屈な
印象はない。ブリュッセルのようにやたら広く、一区画歩くだけで大変という事もない。パリのように街歩きが楽しいというのがウィーン3日目の印象であった。(とら)