ベルヴェデーレ宮殿-クリムト展

今年はクリムト生誕150周年ということで、ウィーンでは10カ所以上の美術館・博物館で特別展示が行われているが、その中の目玉はベルヴェデーレ上宮だ。
7月13日から2013年の1月6日までの半年間、世界最大のクリムト・コレクションと
銘打ち、所蔵の全作品が展示されている。

ベルヴェデーレ宮殿は17世紀後半から18世紀にかけて活躍したオーストリア
オイゲン将軍が60歳の頃、夏の離宮として建設したが、没後後継者がいなかった
ため、マリア・テレジアに売却された。彼はフランス貴族の生まれだが次男で伯爵家を継げず軍人となりオーストリアに渡りハプスブルグに忠誠を誓う。ハンガリーオスマントルコと戦った他、スペイン継承戦争ではイタリアから南仏、フランドルと母国フランスとの戦争に明け暮れた。
 

上宮の中央にあるオイゲン公の紋章



クリムトは現代絵画に大きな影響を与えた画家であるが、ウィーンでの人気は彼の
生涯がハプスブルグ家最後の栄光の時期と重なっていることにあると思う。1862年彼が生まれた時(今から150年前)はフランツ・ヨーゼフ皇帝に待望の世継ぎの王子が誕生して4年後、帝国は希望に満ちていた。そしてクリムトの死んだ1918年に帝国は崩壊する。

階段を上りサロンに入る。天井の装飾画に目を奪われる。
左翼がクリムト特別展、右が19〜20世紀の作品展示となっている。
 
左の部屋に入り、おークリムト、と最初の一枚を撮影したところで係員が
すっ飛んで来て、「カメラ ナイン!」と叱られた。
この美術館は全面写真禁止であった。

という訳で写真はこれ一枚だけ。
有名な「接吻」は奥の方にあった。絵のモチーフからもっと小型の作品かと思っていたが予想以上の大判サイズ。世紀末のデカダン的エロス性は薄れているが、黄金色の派手さは強くなってきた印象を受けた。第一次大戦終わり頃の作品という時代背景を知ると、色彩もさることながら人物のタッチにこの作品の先駆性を感じる。風景画や
肖像画の展示も充実している。同時代作家としてエゴン・シーレの作品もあった。
クリムトの装飾的な作品より、シーレの直截的な表現の方にとらは魅かれるそうだ。

昼も過ぎたので、チェックしてきたレストランを調べると、町に近い下宮のそばらしい。
フランス庭園を通り抜け下宮をめざす。
 
庭園は空いており、シェーンブルン宮殿の混雑振りが嘘のようだ。門を出てレストランを探すが見つからず、あきらめてトラムで町中へ戻ったのは1時に近かった。
2時スタートのツアーを申し込んであったので余り時間もない。集合場所オペラ座にも近いインペリアル・ホテルのカフェでのランチに落ち着いた。(いの)

Oberes Belvedere
入場料 11ユーロ