ルーブル絵画ベストテン

モナリザ」とか「民衆を導く自由の女神」のような超有名絵画を除いてそれぞれベストファイヴを選んだ。併せてベストテン。
ガイドブックに載っている必見の絵以外にも素晴らしい絵はたくさんある。
我々の選んだ絵にも注目してもらえればうれしい。

とらのルーヴル・ベストファイブは全て人物画となった。年代順に並べると、

ルーカス・クラナッハ 「風景の中のヴィーナス」(1529)ドイツ絵画部門
ミロのヴィーナスとは全く違い、少女のような顔つき、切れ長の眼 成熟した細身の
身体で描かれる美の女神ヴィーナスは、冷ややかで、妖艶。ヴィーナスと言うより
小悪魔的にエロティックである。

アントニオ・モロ 「グランヴィル枢機卿の小人と大きな犬」
 (1549〜1553)スペイン絵画部門
フェリペ2世統治のスペインの宮廷画家で肖像画の巨匠といわれるモロの名もない
小人の肖像。おそらくバカにされいじめられていたと思われる道化の小人の気難しい表情と唯一彼が心を開いていた犬との信頼感が現れている。17世紀半ばのリベーラの「エビ足の少年」も同じようなテーマを扱っているが、この少年の明るい表情より孤独感と連帯感が感じられるモロの作品の方が好きだ。          「エビ足の少年」



















エル・グレコ「フランス王聖ルイと小姓」(1590〜1597)スペイン絵画部門
エル・グレコは大好きな画家だが、キリスト以外のテーマの絵をあまり知らなかった。
これはフランス王聖ルイ(1214−1270)の肖像だが、王としての権力、聖人としての
権威より痩せ細った顔つき、物憂げな表情を浮かべる控えめな人物像である。
エル・グレコのキリストを思わせる。

フュースリー 「夢遊病マクベス夫人」(1784頃) イギリス絵画部門
スイス生まれだがイギリスで活躍したフュースリーは幻想的な主題の作品を多く作成
した。ほとんど完全な暗闇の中に、松明を振りかざし、顔を歪め、恐怖の瞳を湛えた
マクベス夫人、この強烈な存在に、左奥にいる不安げな医師と、夫人の出現に怯える若い娘といった二人の人物の姿は、ほとんど見分けられない。

アングル「ルイ=フランソワ・ベルタン」(1832)フランス絵画部門
我々がフランスの「ナベツネ」と呼んでいたベルタン氏は、『ジュルナル・デ・デバ』紙の創設者で、立憲君主制の支持者であった。帝政期には投獄され、シャルル10世
体制に抵抗したが、1830年のルイ=フィリップ体制の確立に貢献した。
エネルギッシュで傲慢な顔の表情はいかにも無冠の帝王という感じである。
ナベツネよりスゴソウ!

いのの選択基準は本人もどうもよく分からないが、何度かルーブルへ行き、ダブって
写真に撮ってきているのは好きな証左だろう。

ダヴィッド 「レカミエ夫人」(1800)フランス絵画部門
レカミエ夫人は人気作家が集まるサロンの主催者として革命後のナポレオン時代に
最も人気のある女性のひとりだった。寝台の上に優雅に横たわった彼女は当時23歳。ダヴィッドにしては品のいい作品で、きっと彼女は気品と魅力あふれる女性だったのだろう。

オーラス・ヴェルネ 「画家の娘ルイーズ・ヴェルネ」フランス絵画部門
最初観た時は高貴な貴婦人かと思った。戦争画家が自分の娘のポートレートを描いたと知ってちょっとがっかりだが、ルーヴルで一番美しいというか私好みの女性である。

ルーヴルには聖書・ギリシャローマ神話をテーマにした絵が大変多いが、その中から2枚選んだ。

グイド・レーニ 「ヘレネの掠奪」 イタリア絵画部門
トロイヤ戦争の引き金になった、トロイヤ王子パリスによるスパルタ王妃ヘレネの誘拐を描いたもの。ヘレナは自らすすんで船に乗ろうとしている。トロイ兵は「こちらへどうぞ」とご案内しており、侍女は宝石箱を捧げ持って後に続いている。不倫の成就という図。妻が誘拐され財産も奪われたと思った夫メネラオス王は烈火のごとく怒り、ギリシャの英雄たちを集めてトロイヤへ攻め込む。

ダニエレ・ダ・ヴォルテッラ「ダヴィデとゴリアテの戦い」(1555年頃)
イスラエルの2代目の王となるダヴィデが若い頃ペリシテ最強の戦士ゴリアテを打ち
取った場面。この題材の絵も多数あるが、多くは切り取った生首をぶら下げていたり
してあまり気持ちのいいものではない。ところがこれは二枚組で裏表に描かれており、躍動感あふれる力感が好きなので取り上げた。
  
ルーベンス 連作「マリー・ド・メディシスの生涯」(1621-1625年)
この大作はガイドブックにも記載されているが、大きなひと部屋がまるごとワンテーマで埋まっているのは圧巻。
フィレンツェメディチ家出身でフランス王アンリ4世の2番目の妻となったマリー・ド・
メディシス(イタリア語読みではマリア・デ・メディチ)の生涯を、24枚の連作で描いて
いる。本人から直接の依頼により2年間という契約で制作されたというが、まさかヌードになった訳ではないだろうに、全てやや太めの裸で描かれているのは不敬罪にあたらなかったのだろうか。決して美人でもない彼女の生涯を神話的アプローチで描くことにより、かえって王妃としての神性アップという形でヨイショしたルーベンスの発想力に
脱帽。
ここでは最初と最後、誕生と昇天の2点を紹介。



















ちょうどNHKの紅白の裏番組、第九の第四楽章を聴きながらこのブログを完成。
長い間おつきあい頂きほんとうに感謝しています。
来年が皆様にとって良いお年でありますように祈念します。(いの+とら)