ショパンコンクールその2


今回の応募者445名から優勝者決定までの流れは以下の通りである。
1)書類・DVDによる審査    選抜された152名が本年3月に発表され
2)予備予選       4月13日から順次召集され実技テストがあり81名が
25日に選ばれた。
こうしていよいよサドンデスの本選が始まる。
3)一次予選 10月3〜7日 課題曲のエチュードノクターン、バラード、スエルツォなどから4曲選び演奏。
4)二次予選 9〜12日 一次予選通過者は43名。課題曲のバラード、スケルツォ ポロネーズ、ワルツなどから4曲。 
5)三次予選 10月14日〜16日 (ここを聴くため我らは日本から来たのだ)
二次予選を通過した20名は課題曲、ソナタ2番、ソナタ3番ロ短調 前奏曲全24曲、マズルカなどから各自で構成し時間配分50〜60分で演奏する。技量と選曲のマッチング、約一時間連続演奏する精密さとタフさが求められる。
6)ファイナル 10月18日(日)〜20日(火) 協奏曲1番か2番を選び、オーケストラと共演
優勝者発表は20日の演奏完了後その日の内に行われる。過去には選考が長引き深夜になることもあったとか。
以上のように、後になればなるほど難曲となり、本選出場者は1次から決勝までの演奏曲目を事前申請し、予備選合格後6か月の猛練習で仕上げ、過酷なトーナメントを勝ち抜くべくワルシャワに集合してきているのである。

本選に選ばれた81名の出身国は,地元ポーランド15名は当然として、中国14名、日本12名、韓国9名とアジア勢が続く。国籍はアメリカやカナダでも東洋系の人達も入れると、日中韓で全体の半数近くに迫る勢いだ。

我々がとれたチケットは三次予選の初日午前の部、2日目は午前・午後の部、最終日午前の部の4回。それぞれ値段も場所も違う。初日は一番高い130ズウォティ(4,500円ぐらい)、一階の2ブロック目の最前列。隣に座ったピアノの先生だという日本女性と話をすると、彼女は全日程通しの券を1年半前から約14万円で予約していたという。
後日仲良くなった別の日本女性に聞くと(この方もピアノの先生)、日本ピアノ教師連盟のようなものがあってそこから大量の日本人が入れ替わり立ち代わり来ているとのこと。大部分の人たちが出場者と同門の先輩、ピアノをやる娘の親とか先生などでお互い顔見知りが多いようである。

初日2番目に出場した背番号10番の韓国人、チョ・ソンジンの演奏にとらは大感激。

力が抜けて終わった後しばらく立てなかった。
すごいと思ったが、これはとらに全く予備知識がないからでなんとチャイコフスキーコンクールの入賞者で下馬評では今回優勝候補のひとりとか。

演奏される曲のおそらくすべてを暗譜で弾けるようなピアノ関係の日本人聴衆に交じって、予備知識ゼロのいのととらは恐れげもなく「マズルカは楽しく弾かなきゃ」とか「かったるい演奏だな」とか勝手な感想を述べあい、各国の天才少年、天才少女も顔色なしである。しかしやはりレベルはメチャクチャ高い。

三次予選通過者20名のうち15名の演奏を生で聞いたわけだが密度の濃い時間だった。マズルカとか葬送行進曲付きソナタとか同じ曲も多かったが、それぞれ自分の持ち味をアピールするその他の選曲にバラエティがあった。改めてショパンのすごさを認識した。ひとりの作曲家の作品だけという縛りで、これだけもたせられるのはショパンのほかにはかろうじてモーツアルトか。

最年少は16歳、最年長でも26歳という演奏者だが、やはり若い人は危なげもあるがフレッシュでインパクトがある。一方、年長者は円熟というかゆとりが感じられる。
この中から半分の10名がファイナルに進む。優勝者を予想するのは難しいが、とらの評価は10番の韓国のチョ・ソンジン、53番ラトビアのゲオルギス・オトキンズ、59番カナダのシャルル・リカルド・アムラン。そのほか配られる日報で「デーモンが降りてきた」と高く評価された、34番のアメリカ国籍中国系ケイト・リュウ、74番最年少16歳の中国系カナダ人トニー・ヤンなど誰が優勝してもおかしくないと思う。
チョ・ソンジン

ゲオルギス・オトキンズ

シャルル・リカルド・アムラン

三次予選が終わった日の午後10時にファイナル出場者の発表があった。
上記5人はすべて残った。嬉しいことに日本からの27番小林愛実さんも三次予選を通過。5年前の前回日本勢は3次までにも進めなかったことを思うと快挙だ。

審査員席風景。ダン・タイ・ソンは居眠り? アルゲリッチ海老彰子、ヤシンスキが並ぶ。審査員席は2日目の我々の席から見えた。

3日間の座席の位置は
1日目1階真ん中

2日目2階席

3日目1階後ろ隅っこ

これから決勝の当日券に並びます。(とら)